【不動産登記】海外在住者の住所変更登記:附票と在留証明書で住所が繋がらない時の「上申書」の書き方と国内連絡先の注意点

海外在住の日本人(共有者や所有者)が不動産の登記名義人住所変更登記を行う際、日本の「戸籍の附票」と海外公館・公証人発行の「在留証明書」だけでは、過去の住所の変遷が完全に繋がらないという実務上のトラブルが頻繁に発生します 。

今回は、実務で実際に使用された事例をベースに、住所の履歴を証明するための「上申書」の作成ポイントと、令和6年4月1日から義務化された「国内連絡先(日本における連絡先となる者)の登記」に関する重要な注意点を解説します 。

1. なぜ「住所が繋がらない」問題が起きるのか?

  • 登記簿上の住所: 千葉県成田市囲護台三丁目2番地3
  • 戸籍の附票の記載: 千葉県成田市囲護台三丁目2番地3 → 平成10年2月1日「米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコ市」へ転出
  • 現在の在留証明書: 「米国ネバダ州ラスベガス市スペンサー通り500番地」に居住

このように、日本出国時の最初の海外住所(カリフォルニア州)と、現在の居住地(ネバダ州)が異なっており、その間のアメリカ国内での転居履歴(中間住所)を公的に証明する公文書が手元にない場合、「登記簿の住所から現在の住所までの連続性」が公的証明書だけでは証明できなくなります 。

2. 解決策:住所移転の経緯を記載した「上申書」を提出する

公的証明書で証明できない中間の住所移転については、本人が法務局に対して経緯を詳細に説明する「上申書」を作成・添付することで補料します 。

【文例】住所移転の経緯を説明する上申書の記載例

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上 申 書

令和○年○月○日

千葉地方法務局 成田出張所 御中

住所:アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス市スペンサー通り500番地
氏名:石川 昂  ←署名

本件申請に当たり、下記の通り住所を移転したことを上申致します。

① 平成10年2月1日に千葉県成田市囲護台三丁目2番地3からアメリカ合衆国カリフォルニア州サウスサンフランシスコ市バレー通り400番地に住所を移転しました。

② 平成20年1月1日に①からアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス市ブロッケンアベニュー通り2000番地に住所を移転しました。

③ 平成21年10月31日に②からアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス市スペンサー通り500番地に住所を移転し、現在居住しています。

3. 実務上の重要ポイント:「国内連絡先となる者」の登記ルール

海外居住者が登記名義人となる場合(所有権移転や住所変更など)、「日本における連絡先となる者の氏名・住所等」を併せて登記しなければならないという新ルールが適用されます(不動産登記法第73条の2等)。

買主が外国籍・外国居住の場合の登記方法のブログ参照

「国内連絡先がいない」場合はどうする?

親族が高齢化していたり、国内に引き受けてくれる知人がいなかったりして、国内連絡先を定められないケースも多々あります 。

その場合は、「国内における連絡先の承諾を得ることができず、他に連絡先となる者がいないため、国内連絡先事項を登記しない」旨の上申を法務局へ行う必要があります 。

💡 実務テクニック(1枚の上申書に集約する) 今回の事例では、手続きを簡潔にするため、**「① 国内連絡先がない旨の上申」と「② 住所履歴(中間住所)を説明する上申」**を別々に作らず、1通の上申書の中にまとめて記載して提出しています 。

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【上申書への集約記載例】

1. 下記登記申請(以下、「本件申請」という。)にあたり、申請人石川 昂の「国内における連絡先となる者」の承諾を得ることができず、他に「国内における連絡先となる者」がいないため、「国内における連絡先となる者」の事項を登記いたしません。

2. 本件申請に当たり、下記の通り住所を移転したことを上申致します。
 (以下、上記の中間住所の履歴を列挙)

4. その他、海外在住者の手続きにおけるチェックポイント

  • 在外公館または米国公証人(Notary Public)のサイン証明・在留証明: 印鑑証明書の代わりに「署名(および拇印)証明書」、住民票の代わりに「在留証明書」を現地の領事館やNotary Publicで取得します 。

まとめ

海外在住者の登記手続きは、国内の手続きと異なり「住民票の除票や附票の保存期間切れ」「外国特有の住所表記・中間履歴の不連続」「法改正による国内連絡先登記への対応」など、複雑な論点が絡み合います 。

戸籍の附票と現在の住所が繋がらない場合であっても、正確な履歴の整理と適切な上申書を作成することで登記申請を通すことが可能です 。